第63章

地獄の淵から自分の命を救い出してくれた人物が、これほど若いとは思いもよらなかったのだろう。

だが、老婦人もまた、幾多の修羅場をくぐり抜けてきた人物である。

彼女はすぐに平静を取り戻すと、溢れんばかりの感謝を込めて高橋祐介に向き直った。

「命を救っていただき、本当にありがとうございます! もしよろしければ、松本家として相応の謝礼を……」

松本老婦人の言葉は礼儀を極めたものだった。

松本家が口にする「相応の謝礼」ともなれば、以前石川家から贈られた別荘以上の価値があることは間違いない。

しかし、高橋祐介はその申し出に対し、ただ淡々と首を横に振った。

「謝礼は不要です」

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