第92章

しかし、その後の記憶が彼女には全くなかった。

「私たち、どうやって脱出したの? どうして私、気を失っていたのかしら?」

藤原未咲の胸中は、疑問で埋め尽くされていた。

そんな奥さんの困惑を前に、高橋祐介は淡々とした口調で答える。

「お義母さんと二人して、僕のことを心配しすぎたんですよ。恐怖のあまり、気を失ってしまったんです」

そこで言葉を区切り、彼は声音を重くして、真剣な眼差しを奥さんに向けた。

「幸い、私が近くにいて、事前に警察へ通報しておいたから良かったものの……そうでなければ、三人とも無事では済まなかったでしょう」

その言葉に、藤原未咲は欠片ほどの疑いも抱かなかった。

二...

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