チャプター 110

ナサン視点

砕け散った鏡を見つめた。欠片のひとつひとつが、ちらつく赤いアルファの瞳を映し返している。痛みそのものは引いた。だが記憶――皮膚の下を這い回った灼ける感覚、意志に反して骨が軋みながら形を変えはじめたあの瞬間――だけは、生々しく残ったままだ。握り締めていた拳をほどく。半ばまでせり出していた鉤爪が、ゆっくりと引っ込み、人間の指先へ戻っていくのを見届けた。

「このまま続けば、次の満月までに完全に制御を失う」荒い息のまま、ひとりごちる。発作は増えていた。間隔も短く、勢いも強い。「それに、あの忌々しいジュリアがソフィアをスプリング・バレーへ転属させやがった。いずれ落とし前はつけさせるが……...

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