第161章

ジュリア視点

医療センター特有のひんやりした消毒薬の匂いは、いつの間にか私の聖域になっていた。マシューが姿を消してから四週間――私は仕事に身を投げ出し、彼が残していった空洞を埋めようとしていた。勤務のたび、患者カルテの一枚一枚、処置の一つ一つが、痛みと自分とのあいだに積み上げる壁の、もう一段のレンガだった。

「二〇三号室の検査結果、ムーア先生が必要だって」ジョンが言い、ファイルを手渡してきた。

私はうなずいた。気を紛らわせてくれることがありがたかった。「今持っていく」

静かな廊下に、私の足音だけが乾いて響く。ウィルソン先生のオフィスへ向かいながら、今日は妙に落ち着いていると感じた。パン...

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