チャプター 58

ユリア視点

最後のセーターをたたみ、きちんとスーツケースに押し込んだ。一か月分の服に洗面道具、必要なもの――スプリング・バレーでの研究プロジェクトに向けて、全部詰め終わっている。

半分ほど空になった寮の部屋を見回したとき、机の下に半ば隠れているものが目に入った。数か月前、ダニエルが貸してくれた医学誌だ。

胸がきゅっと締めつけられる。あれを見たのは……全部が壊れてしまう前、以来だ。震える指で拾い上げ、表紙の隅に走り書きされたダニエルの名前を親指でなぞる。その筆跡の記憶が、鋭い痛みとなって体を貫き、私は思わず身を折りそうになった。

「今じゃない……」自分に言い聞かせるように囁き、慌てて雑誌...

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