第10話

ボニー

彼は走った。私のメイトは、私を見るなり走って逃げた。そして何より最悪なのは、私の心の片隅で、そのことにショックを受けている自分がいたことだ。なんて馬鹿な女! 狼として育てば、誰もがメイトとの出会いの物語を聞かされる。一瞬で恋に落ち、一瞬で繋がりが生まれ、すぐに四六時中べったりになる、と。それなのに、私のメイトは私を見るなり、まるで尻に火がついたみたいに逃げていった。そして私は、それに失望することを自分に許してしまった。どうして? どうして自分にそんなことをしたの? 正直に言えば、私の中の狼も私も、自分たちのメイトが私たちに興味を持つはずがないって、とっくにわかっていたじゃない。だか...

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