第20話

アルファ・ニコラス

森を探し始めて二時間以上が経ち、希望を失いかけていた。その時、不意にストームが唸り声を上げ、ある匂いが俺の鼻を突いた。微かだが、どこにいても分かる匂い――俺のメイトの香りだ。「彼女の匂いがする!」俺が叫ぶと、リリーは慌ててこちらへ駆け寄ろうとして、倒木に躓き転びそうになる。幸いにも、シェーンが彼女から目を離さず、なんとか支えてくれた。

「どこにいるの?」彼女の匂いに集中しようとするが、まだあまりに微かで、場所までは特定できない。頭の中ではストームが荒れ狂い、彼女を見つけたいという欲求で唸り、吠えている。胸の痛みは続いている。狼に心臓発作なんてあるのか? だとしたら...

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