第40話

アルファ　ニコラス

これまでの人生で、これほど速く走ったことはなかったと思う。ボニーの兄と、俺の娘の母親だと名乗るあのクソ女を衛兵たちに連れて行かせた後、俺はトニーを遠ざけておくために、いくつかの別の用事を言いつけた。もちろん、奴が彼女のしでかしたことを知れば、会いに行きたがるだろうことは分かっていた。

もちろん、奴があのクソ女を殺したくてたまらなくなるだろうことも分かっていた。奴はまだ知らないだろうが、もしその時が来たら、彼女の命を絶つという名誉は奴に与えるつもりだ。それくらいは当然の権利だろう。だが今は、彼女に生きていてもらわなければ困る。一体今、何を企んでいるのかを知る必要があるか...