第71話

アルファ・ニコラス

ローワンの頭は汗で覆われ、呼吸は乱れている。だというのに、俺がこれまでにしたことといえば、奴を一度殴っただけだ。たった一発のパンチでそれほど恐怖を感じるのなら、俺が本気になったら女神にでも祈るんだな。「俺のメイトに対して、なんでいつもそんなクソ野郎だったのか教えてもらおうか?」

奴は父親に視線をやってから、困惑した様子で俺の方を向いた。なぜ困惑しているのか、俺にはさっぱり分からないが。「お前のメイト? 本気で彼女を受け入れるつもりか? 冗談だろ? なんでそんなことをする? お前はアルファだ。あんな出来損ないの駄犬なんかより、もっとずっといい相手にふさわしい!」

最悪の...

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