チャプター 36

ヴィクター視点

ゼインは手慣れた無駄のない動きで、ブリアナと物置の扉のあいだにさっと身を滑り込ませた。顔には仕事のできる人間らしい気遣いの表情を浮かべている。その所作は一つひとつ計算されていて、あからさまにならないよう注意を払いながら、相手の意識を別の方向へ向けさせるためのものだった。

「グレイヴ嬢、聞き違いではないでしょうか」

ゼインは流れるようにそう言い、丁寧さを保ちながらも揺るがぬ口調でコーヒーテーブルを示した。

「音は私の書類かばんからしたんです。いま立ち上がった拍子に、うっかり足で当ててしまいました」

ブリアナは目を細め、あからさまな疑いをにじませながら彼を見つめた。そして...

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