チャプター 7
ベラ視点:
夜明けに目を覚まし、クローゼットへ向かった。足首まで落ちる深い赤の水玉模様のワンピースを選び、それに袖を通す。鏡の前で数分、髪をゆるい波のように巻いて整え、軽く姿を確かめてから階下へ降りた。
七時十五分には食堂へ入った。朝の光の中で本邸はひっそりとしていて、静けさを破るのはジェーン・ガルシアが食器を置く、かすかな触れ合う音だけだった。私が入ると彼女は顔を上げ、風雨にさらされたような皺の刻まれた顔が、あたたかな笑みにほどけた。
「おはよう、ルナ」ジェーンは言い、私のために椅子を引いた。「今朝はあなたの好きなものを作ったのよ。チャイブ入りのスクランブルエッグに、焼きたてのトースト」
腰を下ろしコーヒーに手を伸ばしたが、卵の匂いが鼻に届いた瞬間、胃が激しくひっくり返った。脂とバターの重たい香りが、容赦なく押し寄せる。口元を片手で押さえ、私は思わず立ち上がった。
「ルナ? 大丈夫?」廊下へ急ぐ私の背に、ジェーンの声が追いすがる。
化粧室へ滑り込んだのはぎりぎりだった。扉を閉め切るのもやっとで、次の瞬間、胃の中のものが一気に出ていった。吐き気がようやく治まると、口をすすぎ、手の震えが止まるまで洗面台の縁を強く握りしめた。
控えめなノックが響く。「ルナ?」
息をひとつ吸い、肩を正して扉を開けた。ジェーンが立っていた。私の青白い顔を見るなり、その表情は心配から、すぐに理解へと移り変わった。
「平気よ」私は早口で言った。「昨日、変なもの食べたみたいで」
けれど、ジェーンの分かったような眼差しは、私の顔から腹部へ、そしてまた顔へと戻っていた。彼女は〈エクリプス・パック〉に仕える前に子どもを育て上げている。兆しを見誤るはずがない。
「ルナ」周囲に人がいないことを確かめるように、彼女は声を落とした。「もしかして――」
「ジェーン」私は遮り、声の揺れを押し殺した。「あなたが何を思ったとしても、それは忘れて。お願い」
彼女は長いこと私の顔を見つめ、それからゆっくりとうなずいた。「私は何も見ていないわ、ルナ。何も知らない」
「ありがとう」私は囁いた。
ジェーンは短く私の手を握った。「自分のこと、大事にして。お願いね」
食堂へ戻ると、ジェーンは卵料理を片づけ、代わりに味のないトーストと薄い茶を用意していた。
トーストを半分ほど口に運んだところで、ジェーンが小さく咳払いをした。「ルナ、たぶん言っておいたほうがいいことがあるの」彼女は注意深く感情を隠した声で言う。「マーガレット夫人に、昨日、客用のスイートを四室整えるよう頼まれたわ」
私はそっと湯呑みを置いた。「客用のスイート? 誰か来るの?」
ジェーンの表情が、ほとんど分からないほどわずかに強張った。「来るんじゃないの、ルナ。アイリスさま、マーガレットさま、それからフェイさまが、この屋敷に移ってくるの」
言葉が、冷たい水のように胸へ流れ込んだ。マーガレットはいつも東棟の離れ――老グレイヴ夫人と暮らす小さなコテージに住んでいた。フェイはエヴァンと結婚してから南棟で暮らしていた。
それが今、三人ともが本邸の中心に入り、私を四方から取り囲むことになる。
「表向きの理由は、新しい赤ちゃんの世話を手伝うためよ」ジェーンは慎重に言葉を選び続けた。「アイリスさまが、特に最初の数か月は、みんなが近くにいたほうが楽だって」
「そうよね」私は自分でも驚くほど落ち着いた声で答えた。「理にかなってる」
ジェーンはうなずき、食卓の片づけを始めた。
彼女が台所へ消えると、私は食堂の席にひとり残った。窓越しに庭園を眺め、これから起こることを考える。あと数時間もすれば、この家は人で満ち、誰もが私の一挙手一投足を見張り、私が折れる瞬間を待つだろう。
見ていればいい。気づいたときには、私はもういなくなっている。
階段を下りる足音がして、私は顔を上げた。イーサンが姿を現した。完璧に仕立てられたスーツを着込み、黒髪はまだシャワーの名残で湿っている。
彼は食卓の私を見つけるなり、間髪入れずに言った。「正午にブリアナを迎えに行け。夏学期が終わった」
私は湯呑みを置いた。「正午は予定があるの」
彼は足を止め、眉をひそめた。「予定? 何の予定だ。お前にいったい何がある」
「私の用事よ」私は淡々と言った。
「ベラ、午後はずっと会議だ。迎えに行け。難しいことじゃない」
「なら会議をずらして」私は言った。「あなたの妹でしょ。私の妹じゃない」
彼の顔を、何かが一瞬よぎった――私が拒んだことへの驚き。
ジェーンが台所から出てきた。別の保温容器を抱えている。「アルファ、フェイお嬢さまの朝食ができました。冷める前にお出かけになったほうが」
イーサンは苛立った目でジェーンを睨んだが、彼女は薄い笑みを崩さずに見返した。彼は小さく悪態をつき、出ていった。背後の扉は必要以上の力で閉められる。
ジェーンは私の椅子のそばに立ち、まだ半分残っているのに湯呑みへ茶を注ぎ足した。「うまく受け流したわね、ルナ」彼女は静かに言った。
「そうかしら?」私は顔を上げ、彼女を見た。「ジェーン、今日の午後にアイリスとマーガレットが越してきたら、どうか気をつけて」
彼女は眉をひそめた。「どう気をつければいいんです?」
「私をかばわないで」私はその目をまっすぐ見据えた。「二人の前で私の肩を持ったり、助けようとしたりしないで。ただ自分の仕事をして、余計なことはしないでいて」
「ルナ、私はこの家に二十年も仕えてきたんですよ――」
「だからこそ、私の言うことを聞いてほしいの」私は遮った。「イーサンなら、あなたが長くここにいるぶん多少の態度は見逃すかもしれない。でも、マーガレットとアイリスは違う。あなたが私の味方だと思う理由を少しでも与えたら、あの人たちはきっとあなたを追い出す方法を見つける」
ジェーンの表情は、戸惑いから心配へと変わった。「本当に、そこまで――」
「するわ。間違いなく」私はきっぱりと言った。「ジェーン、あなたはもう六十代よ。もし解雇されたら、次の勤め先を見つけるのは簡単じゃない。私のせいで仕事を失ってほしくないの」
彼女の目に、こぼれ落ちる寸前の涙が滲んだ。「ルナ……」
「私は自分のことは自分で守れるわ」私は手を伸ばし、彼女の手をそっとひと握りした。
九時半、私は車でエンバーホールドの中心街へ向かい、流れるような書体で『ムーンライト・ヴォールト』と金文字が掲げられた、品のある店先の前に車を停めた。
中へ入ると、鈴の音が控えめに澄んで鳴った。店内は濃い木目と柔らかな照明で統一され、陳列ケースは品物の美しさを際立たせながらも、目にうるさくならないよう絶妙に配置されていた。高級なスーツを着た中年の男が、正面のカウンターの奥から顔を上げた。
「おはようございます」彼はカウンターを回り込み、きちんと私を迎えに出てきた。「オスカー・レーンと申します。当店のオーナーです。本日はどのようなご用件でしょうか」
私はベルベットのケースを二人の間のカウンターに置き、気取ることなく開いた。王冠の完全な威容があらわになった瞬間、オスカーの目が見開かれ、職業人らしい平静がほんのひととき崩れた。中央のピンクダイヤモンドが光を受けて虹色の欠片のように跳ね返し、その周囲を囲む小さな石々は、まるでひとつの星座のように、内側から炎を灯しているかのごとく輝いていた。
「これを売りたいの」私は簡潔に言った。
オスカーはポケットから宝石鑑定用のルーペを取り出し、王冠の上に身をかがめた。何を見ているのか正確に理解している者特有の、鋭く集中した眼差しだった。
やがて顔を上げたとき、その目には値踏みするような光が宿っていた。
「見事なお品です。九十万でお引き取りできます」
私は反応を見せず、ただ静かに彼を見返した。「中央の石だけで五カラットの無傷のピンクダイヤモンドよ。脇石はすべて最高等級の色味で、透明度も最上級。素材だけでも百万はくだらない。しかも、それに加えて、台座には月の女神の祝福が刻まれている。その歴史的価値はまだ勘定に入れていないわ」
オスカーの表情がわずかに引き締まった。「歴史的価値というものは主観的ですから――」
「狼族の収集家にとっては違うわ」私はなめらかに言葉を挟んだ。「この王冠に刻まれた記号は古い言葉のもの。群れの儀式でも、もう二百年以上使われていない種類よ。収集家なら誰だってひと目でわかる。これは単なる宝飾品じゃないの、レーンさん」
彼はしばらくのあいだ私を見つめ、明らかに評価を改めていた。「宝石にずいぶんお詳しいようですね」
「調べたの」私は言った。「この王冠の価値も、オークションに出せばあなたがいくらで売れるかも、私はわかっている。私はこれを百三十万で譲るつもりよ。本来の価値よりかなり安い額でね。急いで現金が必要だから。でも、足もとを見るような額で侮らないで」
オスカーは黙り込み、カウンターを指先で軽く打ちながら計算していた。やがて、とうとう頷く。「百三十万。二十四時間以内に送金で」
「今日中に」私はきっぱりと言った。「今日の営業終了までに、私の口座へ入金してほしいの」
彼は片眉を上げた。「それはかなり異例でして――」
「少なくとも百八十万、おそらく二百万近くで売れる品を差し出しているのよ」私は言った。「お願いしているのは支払いを急いでもらうことだけ。あなたほどの伝手がある人に、それほど難しいこととは思えないけれど」
オスカーはわずかに笑った。手強い相手を認め、なおかつ敬意を払う者の笑みだった。「なかなかの交渉術ですね、ミス――」
「ムーアです」私は言い、その瞬間に彼の目が認識に見開かれるのを見た。「ええ、そうなの」
彼は契約書を取り出し、詳細を書き込み始めた。私は署名する前に一行一行を注意深く読み、隠れた条項や不意の手数料がないことを確かめた。すべて終わると、オスカーは自ら私を入口まで見送った。
「本日は実に有意義なお取引でした、グレイヴ夫人」彼は言った。「またお売りになりたい品がおありでしたら――」
「そのときは真っ先にあなたに連絡するわ」私は澄ました顔で、するりと嘘をついた。
店を出て、私は携帯を確認した。十一時。ムーンライト・パレスへ向かう時間だ。
