第106章

林原寧々の怨嗟を孕んだ視線は、否が応でも目に刺さる。だが林原撫子は、ふわりと一瞥を返しただけだった。まるで、そこにいるのが空気でしかないみたいに。

リビングの空気は、息が詰まるほど重い。

使用人たちは茶を運ぶと、視線すら合わせず足早に退いた。

誰もが湯呑みに手を伸ばす気分ではないのに、林原撫子だけがそれを引き寄せ、喉へ流し込むように一気に飲み干した。

ほとんど丸一日、飲まず食わずだった。あれだけ騒げば、喉もからからになる。

けれど、その所作は周囲にはひどく場違いに映ったらしい。湯呑みを置いた途端、全員の視線が彼女に集まった。

最初に動いたのは村木原矢だった。自分の手つかずの茶を、...

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