第112章

トレーの上には食パンとソーセージ、それに目玉焼きが二つ。さっきから漂っていたいい匂いは、どうやらここからだったらしい。

村木原矢の姿を見た瞬間、林原撫子はさらに頭を下げた。蚊の鳴くような声で、

『む、村木警察官……』

村木原矢はトレーをダイニングテーブルに置き、淡々と言う。

『起きたなら顔洗ってこい。それから食え』

林原撫子は指先まで熱くなるのを感じた。彼の目を見られないまま、鳥の巣みたいな髪を慌ててまとめ、立ち上がって洗面へ向かう。

――と、ドアに手をかけたところで背後から声が飛んだ。

『そこ寝室。洗面所は右だ』

林原撫子はぴたりと固まり、言われたとおりに向きを変えると、逃...

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