第119章

そう言いながら、村木お母さんは白石七海へ視線を投げ、前に出るよう促した。

さっき派手に転んだせいで、七海は一瞬ためらう。それでもゆっくり村木原矢のそばへ寄り、手を伸ばして支えようとした。

『原矢、怒らないで。おばさんだって、あなたのために……』

『その手を引っ込めろ』

村木原矢は歯を食いしばった。額には細かな冷や汗。――ここにいたら、終わる。

体内で薬がじわじわと回り、秒ごとに苦痛が増していく。だが理性だけは、まだ折れていない。

誰かに人生を操られる気はない。まして、好きでもない相手と、こんな形で縁を結ばされるなんて――絶対に。

彼は踵を返し、階段へ向かった。足取りはふらつく。...

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