第123章

村木原矢が浴槽の縁に手をついて、ようやく身体を起こしたのを見て、林原撫子は「早く着替えを取ってこなきゃ」と立ち上がろうとした。

――が。

しゃがみ込んでいた時間が長すぎたせいで、立った瞬間、視界がすとんと落ちる。目の前が真っ黒になり、身体がふらりと前へ投げ出された。

村木原矢が咄嗟に手を伸ばす。けれど浴室のタイルは濡れていてつるつるだ。撫子の勢いも思った以上に強く、そのまま彼までバランスを崩す。

「わっ――」

『ぽちゃん』と鈍い音。

二人そろって浴槽へ逆戻りし、水がばしゃんっと跳ねて、浴室中に飛び散った。

撫子は反射的に手をついて身体を支えようとした。ところが掌が、熱くて硬い何...

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