第132章

村木原矢はスマホを手に取った。画面に表示された名前を見ただけで、嫌悪感に眉間がきゅっと寄る。

さっきまでの上機嫌は、跡形もなく消えた。着信を切り、そのまま放置する。

――が、相手はしつこかった。何度も、何度もかけてくる。

とうとう苛立ちを押し殺し、通話ボタンを押した。声は氷みたいに硬い。

『仕事が忙しいって言っただろ。家で用がないなら、かけてくるな』

あのとき、林原お母さんにあんなことをされて以来、村木原矢は一度も家に戻っていない。

特殊な仕事だ。だからこそ、家だけは唯一、鎧を脱げる場所だった。

それが今では――あの家は、打算の匂いしかしない。

それでも村木お母さんは諦めなか...

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