第17章

少し離れたところで、林原父はスーツの襟を正し、目を細めて人波の中をしばらく探った。やがて、テレビや新聞でしか見たことのない人影を捉える。

視線の先にいたのは、濃色の中山装を着た、やや年配の男。

――村木家の老当主。今なお村木を取り仕切る人物だった。

林原父の胸が、かすかに弾む。

ということは。あの村木老当主の周りにいる連中は、筋金入りの金持ちか、名の通った家の者ばかりだ。

腹を決めた林原父は少し考え、手招きして林原寧々と林原母を呼び寄せた。

それから三十分も経たないうちに、周囲の顔には押し殺しきれない嫌悪が浮かび始める。

ある女が隣へ身を寄せ、声を落として吐き捨てた。

「林原...

ログインして続きを読む