第20章

「さっきお祝い渡してた、林原家のお嬢さんじゃない?」

「たしかに……でも、どうしたのよあれ」

林原撫子は、さっき更衣室で汚れた服を着替える暇すらなかった。襟元は男に掴まれたせいで少し歪み、慌てて飛び出したから、まとめていた髪もほどけてしまっている。肩に落ちかけた髪の束が、うなじに浮いた汗にぺたりと張りついていた。

見るからに、みすぼらしくて――痛々しい。

悪い想像をすれば、彼女が何をされたのかなど、容易に思い当たる。

またしても大勢の奇妙な視線に囲まれ、撫子はスカートの裾をぎゅっとつまんだ。頭の中が真っ白になる。

撫子の言葉を聞き終えた村木原矢は、目つきが鋭くなった。瞳の奥に、凶...

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