第22章

林原撫子は声をわずかに張り上げた。

『あなたたちの中に、わたしを信じない人がいるのは知ってる。林原寧々が言ったみたいに、わたしがこの男を誘惑したって思ってるんでしょ』

『でも、真実がどうだったかなんて、あとで問いただせばすぐわかる』

意味ありげに林原寧々へ視線を投げる。寧々の瞳の奥をよぎった、はっきりとした動揺。撫子は見逃さなかった。

林原寧々は地面に倒れ、意識を失ったままの男を見据えた。体の横に垂らした手が、無意識にきゅっと強張る。心臓の拍動が、一拍だけ乱れた。

――どうして。

何度も釘を刺した。絶対に捕まるな、と。なのに今は――。

全部が、崩れていく。

長い爪が掌に食い込...

ログインして続きを読む