第26章

林原撫子は舌先で歯をぐっと押しつけ、じわりと痛みが走って、ようやく我に返った。

林原景也の言葉には、露骨な脅しが混じっている。

撫子は視線を上げると、ポケットの中のスマホを気づかれないよう奥へ押し込み、それから余裕ぶった顔で見返した。

一語ずつ、噛みしめるように言い切る。

『わたし、録らない!』

『林原撫子!』

こんなにも言うことを聞かないとは思わなかったのだろう。景也は目を見開き、苛立ちをにじませた。次の瞬間、二、三歩で距離を詰めると、そのまま撫子のポケットへ手を突っ込んでスマホを奪おうとする。

ここまで露骨に強引に来るとは——撫子は反応が遅れた。

引っ張られて、ポケットか...

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