第31章

誘拐犯はぎりっと奥歯を噛みしめ、手の中の刃を握り込んだ。瞳の奥には、血の匂いに酔った獣みたいな色が渦巻いている。

ふいに何かを思いついたのか、神経質にくつくつ笑い、それから――血の付いたナイフを、傍らの人質の喉元へ、ゆっくりと当てた。

それを見た瞬間、その場の全員が理解した。顔色が変わり、呼吸が乱れる。

『一歩でも近づいたらよぉ……この刃が、こいつの首に入らねえって保証できねえぞ』

血に引きずり出された悪意が、男の内側でうごめく。瞳からは人間らしい理性が抜け落ち、興奮と昂ぶりだけがぎらついていた。

『落ち着いてくれ。もう誰も傷つけるな』先頭の警官が一歩退き、息を吸ってから、できるだ...

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