第42章

林原撫子は玄関をくぐりかけたところで、ふと動きを止めた。林原聡の声色に滲む不機嫌さを、ようやく聞き取ったのだ。きょとんとしたまま一拍置き、ぱん、と自分の額を叩く。

――あ、そういうこと。

撫子は振り返って村木原矢を見た。村木は目を細め、林原聡を静かに見据えている。空気にぴりついた火薬の匂いが混じる。撫子は慌てて両手を振った。

『ち、違うの。二人とも誤解してる』

そして林原聡へ向き直り、急いで言葉を継ぐ。

『お兄ちゃん、この人、警察官の村木原矢さん。私があんなに早く助け出されたの、この人のおかげなの。あのときだけじゃなくて、そのあとも……いろいろ助けてもらってて』

撫子がかいつまん...

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