第44章
林原撫子は両手を脇に垂らしたまま、きゅっと握ってはほどき、結局なにも言えずに手を伸ばした。上司が投げ捨てるように置いていった企画書を一枚めくり、さっと目を通す。
真新しい。書き込みひとつない。
――これ、そもそも読んだの?
『この企画、出来がよくない。サボったんだろ。今日は書き直して出せ』
上司は軽く言い捨て、背を向けたまま出ていく。
『次もダメなら、また書け。俺が納得するまでな』
背中がドアの向こうへ消えた瞬間、オフィスにどっと笑いが起きた。
『やだぁ、ほんと“運がいい”よね。上司が名指しで書き直し命じたの、何年ぶり?』
タイトスカートの女が悠々と腰を下ろし、舌打ちめいた音...
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