第45章

彼は唇をきゅっと結んだまま、言葉を選ぶようにしばらく黙った。何かを口にしかけた、その瞬間――ぶるぶる、と携帯が震える音に遮られる。

二人とも一拍、動きを止めた。林原撫子は自分の携帯を身につけていないことを思い出し、視線を村木原矢へ向ける。原矢はポケットから端末を取り出し、着信表示を一瞥した。瞳に、珍しく「参ったな」という色が走る。

手の中で携帯はしつこく震え続ける。結局、彼は画面を滑らせて通話に出た。

『原矢、どこにいるの?』

スピーカーにしていないのに、受話口から漏れてくる声ははっきりと撫子の耳に届く。

聞き覚えがあった。村木家の奥様――村木原矢の母の声だ。

原矢が答えるより早...

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