第49章

雨上がりの清い匂いと、男からふわりと漂う淡いウッドの香りが鼻先で混ざり合う。林原撫子は顔に浮かびかけたぎこちなさを押し込み、ドアを開けて荷物を滑り込ませると、そのまま後部座席へ乗り込んだ。

車内は終始、言葉がない。

撫子は無意識にシートベルトを両手でぎゅっと握り、どこか落ち着かないまま窓の外を見つめていた。

走行は三十分ほど。車がゆるやかに止まったのは、見慣れた屋敷の前だった。撫子は車窓越しにそれを認め、思わず目を見開く。

門の前に、使用人たちが男女に分かれて二列、ぴしりと整列していたのだ。

『これは……』

眉を寄せて呆然とする撫子をよそに、村木原矢がシートベルトを外して降りる。...

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