第55章

村木珠美?

林原撫子は一瞬、きょとんとした。脳裏に、ひゅっと嫌な連想が走る。

村木……?

なぜだろう。冷えた横顔が、勝手に浮かんできた。

村木と聞いた途端、真っ先に思い出したのは村木原矢――その名前だった。

むせたみたいに咳き込み、撫子は慌ててその思考を頭の外へ追い出す。代わりに、できるだけ穏やかな笑みを作った。

『私は林原撫子です』

『林原撫子……』村木珠美はその名を口の中で転がし、どこか聞き覚えがあるように首を傾げる。やがて、ふっと思い当たった顔で頷いた。

授業開始までまだ十分ほどある。珠美は本を置き、目を細めて撫子を見た。

『心理学、どうして学びたいの?』

撫子は微...

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