第60章

林原父は喉に引っかかった息が上がらないまま、ぶはっと激しく咳き込んだ。林原母は顔色を変え、三歩を二歩で詰めると背中をさすり始める。

『お父さん、大丈夫!?』

林原景也も目つきが鋭くなり、慌てて水の入ったグラスを差し出した。

その場はたちまち蜂の巣をつついたような騒ぎになる。けれど林原撫子は首だけを少し傾けて眺めている。表情はほとんど動かない。まるで空間が二つに割れ、彼女だけが外側にいるみたいだった。

『お姉ちゃん! お父さんがあんたのせいでこうなってるのに、よく平気で座っていられるね!』

林原寧々は怒りで顔を歪め、憎しみの籠もった目で吐き捨てる。『そもそも誰がこんなくだらない誕生日...

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