第64章

男は半信半疑のまま林原撫子のスマホ画面に目を落とし、胸の奥で合点がいった。

林原家の姉妹の件がツイッターで急激に燃え上がっていることは、彼も知っている。

しばらく逡巡した末、男は歯を食いしばって頷いた。

どうせもう、追い詰められている。――林原撫子を信じてみるしかない。死に馬に鞭、いや、藁にもすがる思いで。

林原撫子も小さく頷き、声を落としていくつか段取りを確認すると、バッグを手に踵を返し、その場を離れた。

翌朝。

早くから林原父は起き出し、きっちりアイロンのかかったスーツに袖を通す。林原母がネクタイを結び直してやりながら、眉間に皺を寄せた。

『取締役会からも、もうだいぶ不満が...

ログインして続きを読む