第67章

林原撫子はそっと目を閉じ、深く息を吸ってから、ゆっくり吐き出した。そうして身を翻す。

背後に立っていたのは、かつての厳格な父と優しい母――その顔には、目に刺さるほどの得意げな笑みが浮かんでいた。

林原父はスーツ姿のまま、狭い賃貸アパートの前に立つと、場違いなくらい浮いている。舌打ちめいた音を二度鳴らし、首を振りながら、勝ち誇った声を落とした。

『林原撫子。忘れるな。俺はお前の父親だ。策比べで、俺に勝てると思ったか?』

言いかけて、ふと何かを思い出したように、口元の笑みがすっと薄れる。

『いくら言ってもお前は林原家の人間、よその連中に肩入れして俺たちに刃向かうとはいい度胸だ。今回は『...

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