第74章

林原撫子は、その聞き慣れた――そして耳障りな声を聞いた瞬間、足をぴたりと止めた。まとっていた柔らかな空気が、すっと剥がれ落ちる。

ゆっくり振り返る。早足で近づいてくる林原寧々を見据え、瞳の奥に嫌悪がひとすじ走った。

村木原矢も歩みを止め、自然な所作で撫子の隣へ立つ。冷えた視線が林原寧々を上から下までなぞった。

値踏みするようなその目に、寧々は反射的にスカートの裾を握りしめる。

二人が並ぶだけで、空気が重くなる。さっきまで言葉を続ける気だった寧々も、喉の奥がきゅっと詰まった。

撫子はそれを見て、口元だけで笑う。声は氷みたいに澄んでいた。

『林原寧々。あなたも、これが醜聞だってわかっ...

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