第82章

少年は頭をぽりぽりとかき、さっき聞き出してきた話をそのまま繰り返した。

『豆子はおとといからもう孤児院にいないよ。みんな、院長が豆子をお父さんとお母さんのところに連れてったって言ってた。もうすぐいい暮らしになるんだって』

林原撫子の瞳孔がきゅっと縮む。胸の奥から冷たいものがせり上がり、頭のてっぺんまで一気に駆け抜けた。

この子たちが、わざわざ嘘をついて自分を騙す理由なんてない。つまり、豆子は院長と一緒に出ていった。

けれど、里親候補から必死に逃げ回っていた子が、どうして院長に自分からついていく? いまの豆子は、危険な状況にいる。

もう、彼女ひとりでどうにかできる話じゃない。林原撫子...

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