第87章

状況が飲み込めないままの林原撫子は、これ以上うかつに動くのが怖くて、車内の隅に身を縮めた。視線は真っ黒な窓の外へ。思考は、ふっと遠のいていく。

帰り道、いちばんよく喋る村川崇史が珍しく話題を振らなかったせいで、ほかの面々も口を閉ざしたままだった。

約1時間。男の警官の運転は終始安定していて、撫子がうとうとしかけた頃、警察署に着いた。

ここはもう慣れた場所だ。撫子は村川崇史と並んで事務室へ向かい、調書を取られる。

今日見つけたこと。重要な目撃証言。密室に残っていた小さな手がかり――それらを、ひとつ残らず話した。

筋道は明快で、矛盾もない。聞き手が深掘りする必要すらないほど、整理されて...

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