第93章

ホワイトボードの文字は少し判読しづらかったが、付箋にまとめられた情報から、林原撫子は幾つかの細部を拾い上げた。

村川崇史の示唆に従い、眉を寄せて考える。

『顔見知りの犯行だとしたら……動機は金? それとも、情?』

村川崇史は曖昧に頷くでも否定するでもなく、立ち上がって写真の隅を指で囲った。――男性の手首にあるはずの高級腕時計が、消えている。

『現場に物色の形跡はないのに、腕時計だけがない。金目当ての線はある。ただ、妻と子どもの死に方が静かすぎる。侵入強盗なら、あの男と同じような状態になってもおかしくないし、現場ももっと血で荒れる』

『荒らされてないのに、腕時計だけ……』

撫子は唇...

ログインして続きを読む