第97章

しかし次の瞬間、林原父は眉間にしわを寄せ、低い声で言い放った。

『来たならさっさと入れ。玄関先で突っ立って、みっともないだろ』

膨らんだ幻想の泡は、そこで完全に弾けた。残ったのは、容赦のない現実だけ。

林原撫子は胸の奥のわずかな痛みを押し込み、返事はしないまま中へ入り、適当に空いた席へ腰を下ろした。

両親にぴたりと寄り添って座る林原寧々とは違い、撫子の席はずいぶん離れている。家族団らんというより、裁きの場に呼び出されたみたいだった。

林原父は内心むっとしたが、ここには外部の人間もいる。怒鳴りつけるのは堪え、咳払いをひとつしてから釘を刺す。

『お客さまに挨拶もしないのか。どう躾けた...

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