第98章

 だが言い終えるより早く、林原寧々が彼の袖をきゅっと掴んだ。困りきった顔で、縋るように言う。

『お兄ちゃん、うちは家の力でここまでやってきたでしょ。結婚だって、最終的にはお父さんとお母さんが決めるものだよ。もうこれ以上、揉めさせないで……』

『揉めさせてるのは俺だって?』

 その瞬間、林原景也は尻尾を踏まれた猫みたいに顔をしかめた。

『じゃあ聞くけどさ、嫁に行くのが寧々だったらどうなんだよ。お前と林原撫子、歳だって大して変わんねぇだろ!』

 今日、松谷石矢に嫁ぐのが誰であろうと、景也は庇ったはずだ。なのに寧々の言い方は、まるで自分だけが子どもで、分別がないみたいじゃないか。

 普...

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