第99章

林原母の手が宙でぴたりと止まった。次の瞬間、声をぐっと落とし、二人にしか届かない囁きに変える。

『わがまま言わないの、撫子。お母さんは全部、あんたのためにやってるの。松谷様なら、いい暮らしをさせてくれる。村木家のあの人と知り合いだからって、玉の輿に乗れるなんて思わないで。向こうはあんたのことなんか本気で見てない。ただ遊ばれてるだけよ』

――村木家が、林原撫子みたいな女を娶るはずがない。

胸の奥でそう吐き捨てながら、林原母は薄く笑った。自分ですらこの娘を見下しているのだ。まして村木家が、まともに扱うわけがない。

『……あたしのため?』

林原撫子は、心の中で音もなく嗤った。

自分のた...

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