第20章

「康之、何してるの?!」

 リリアが悲鳴のように叫び、引き止めようと手を伸ばす。だが康之は、もうものすごい勢いで階段を駆け下りていた。

 顔いっぱいに焦りを浮かべ、反射的に梨紗を抱き起こそうとする。

 そのとき背後から、リリアの怒声が飛んだ。

「その子、エイズなんでしょ!」

 康之の手が、中途半端に伸びたまま空中で止まる。苦しげに顔を歪め、逡巡した末、彼は立ち上がって数歩あとずさった。

「梨紗、大丈夫か。救急を呼ぶ」

 康之はスマホを取り出し、119番にかけようとする。

「血まで出てるのに? エイズ患者の血に触れたら感染するって聞くでしょ。救急隊だって触ろうとしないわよ」

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