第49章

梨紗は首だけを傾けて圭也を見やり、問いかけた。

「……大きなお家って、体面がいちばん大事なんじゃないの? 部外者の私が見物しに行ったら、怒るんじゃない?」

圭也はふっと笑って首を横に振る。

「俺はあいつらと犬猿の仲だ。面子が潰れるなら、むしろ飯がうまい」

その言い方が意外で、梨紗は瞬きをした。

「……犬猿? どういう因縁があるの?」

「聞きたい?」

そう言うなり、圭也がすっと身を乗り出してくる。背中をわずかに丸めたまま、梨紗のほうへ重心が傾いた。

不意の接近に、梨紗は目を見開く。

圭也から、淡い木の香りがした。清潔な石けんの残り香に、雪松を混ぜたみたいな――近すぎるのに、不...

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