第72章

「お父さま、わざと意地悪を言ってるわけじゃないのよ。でも今日、あなたも見たでしょう? 圭也があの女のために康之に手を上げた。これから先、あの女のために何をしでかすか分かったもんじゃないわ!」

麻紀子は歩み寄り、痛々しげに康之を支えて立たせると、憤りを隠さず言い募った。

四之助は氷のような顔で梨紗を射抜いた。何も言わず、何もせず――それだけで場の空気が締め上がる。梨紗は反射的に視線を落とす。

「まずは自分の息子が何をしたか、聞いてみたらどうだ。しつこく付きまとっただけじゃない。力ずくでどうにかしようとした。殴ったのは、竹原の名に泥を塗らせないためだ」

圭也の声は低く、冷たい。

「康之...

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