第90章

梨紗はぶんぶんと首を振った。その瞬間、完全にパニックに陥る。ネックレスがない。圭也は、もう自分を見つけられない。――このまま本当に、ここで死ぬのか。

悔しさが、胸の奥からどろりと湧き上がった。

三年。地獄みたいな目に遭って、それでも死にものぐるいで生き延びて、ようやくタイから逃げ帰ってきた。冷たい視線も、侮辱も、全部飲み込んで、やっと生活を立て直したのに。

どうして。

どうして、こんなに必死に生きているのに、運命はまだ放してくれない。何ひとつ悪いことなんてしていないのに、どうして自分ばかりが――。

どこから湧いたのか分からない力で、梨紗は足を上げ、タウィの脛を思いきり蹴りつけた。

...

ログインして続きを読む