第64章

九条美琴は仰向けのまま、天井を見つめていた。

「真剣に考えたの。当時あいつとつるんでた人さらいは、まだ捕まってない。たぶん一生捕まらない可能性だってある。私の証言だけじゃ――たとえ今、本人が認めた録音があっても、罪に問うには足りない。だから通報しても無駄」

「じゃあ、どうする。ここで終わりか?」

「終わり?」九条美琴は冷たく笑った。「あり得ない。牢屋にぶち込めなくても、社会的に殺す。身の破滅まで持っていく」

陸川雅樹は、その言葉には返さなかった。

針を抜き終えると、一本ずつ丁寧に片づける。さらに毛布を引き寄せ、九条美琴の肩口までそっと掛けてから、低い声で言った。

「法治国家だ。何...

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