第74章

「うん」

陸川雅樹が頷く。視線を上げて水野莉央と目が合った瞬間、ふたりの間で――言葉にしない合図が交わされた気がした。

「莉央、早く!」

九条美琴が親友を見て、釘を刺すような目つきで促す。

……やっぱり。

わざと席を外して、わざと二人きりの時間を作ったんだ。

薄っぺらい友情ってやつ!

陸川雅樹は視線を引っ込め、表情は淡いまま。

けれどよく見れば、瞳の奥に小さな光が宿り、九条美琴のほうへ――かすかに、執着するみたいに留まっていた。

妙な沈黙が数秒。

美琴が話題を探して口を開く。

「えっと……注文、あなたが決めて。私、好み分からないし」

分厚いメニューを差し出す。

陸川...

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