第87章

「確認しましたところ、陸川若様は『あの絵は市場に出すべきものではない。他人の手に渡るのも望まない』とおっしゃっていました」

九条美琴は胸の奥をちくりと刺され、陸川雅樹が法外な値で買い取ろうとした真意を、ふいに悟った。

――私が、あの絵を見たときの反応。それが彼を痛ませた?

だから高値で買い取って、私が別の場所でまた目にして、二度と傷つかないように……?

きっと、そうだ。

でなければ説明がつかない。気に入らない絵に、どうしてそこまでの金を積む必要があるのか。

「桐谷さん。陸川若様に伝えて。絵は売りません。作者からは、評価していただいたことへのお礼だけ」

「承知しました」

通話を...

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