第93章

「いや、さっき手術が終わったところ。4時過ぎに救急が入ってさ。建設現場の作業員が高所から落ちて、鉄筋が3本、縦に身体を貫通してた。かなり危険な状態で、医者4人が入って……今までかかった」

淡々とした口ぶりなのに、九条美琴は聞いているだけで肝が冷えた。思わず尋ねる。

「……手術、成功したの?」

「ひとまずはな。でも患者はまだICUで経過観察中だ。峠を越えられるかは……本人の気力次第だな」

美琴はスマホを握りしめたまま、急に目の奥が熱くなる。受話器の向こうの男が、特別に強い英雄に思えた。死神でさえ怯むような英雄に。

――自分がさらわれていた頃。ひどく殴られて大怪我をしたとき、町の診療所...

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