第102章 彼女が授けた祝福

引っ越すと決めた途端、須藤寧音はかえって冷静になった。

小寺蘭は大きく息を吐き、すぐさま袖をまくる。

「引っ越す! 今すぐ! 私が荷造り手伝う!」

「蘭ちゃん、書斎のファイルだけまとめてくれる? ほかは急がなくていいから」

立花徹は黙ったまま、ソファに散らばっていたクッションを静かに集める。表情は穏やかだった。

そのとき、玄関のチャイムが鳴った。

同市内の配達員が、ひと目で高級品と分かる、香水の匂いをまとった封筒を差し出す。

「須藤寧音様のお荷物です。ご本人様のサインをお願いします」

眩しいほど華美な封筒。差出人欄に「古川寒弥」と印字されているのを見た瞬間、須藤寧音の目がすっ...

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