第105章 古川寒弥が怒る

古川家の別荘。

かかりつけ医が帰ったばかりだった。古川辰はただのウイルス性の風邪による高熱で、薬を飲ませたら、もうぐっすり眠っているという。

西川星奈はベッドの縁に腰を下ろし、温めたタオルで息子の額をそっと拭きながら、古川寒弥の顔色をうかがった。

寒弥は玄関から入ってきて以来、一言も発していない。だが底の見えない瞳の奥では、恐ろしい嵐が渦巻いているのが分かった。

「寒弥さん、心配しないで。先生が、辰ちゃんはすぐ良くなるって……」

星奈が柔らかく言って、息の詰まる沈黙をほどこうとする。

寒弥は彼女を見なかった。大きな窓の前へ歩き、背を向ける。薄暗い室内で、その背中はやけに冷たく硬い...

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