第110章 市役所、離婚届を受け取る

サンタアナ病院の特別病室。

床まで届く大きな窓から射し込む陽光が、床一面にぬくもりを落としていた。

須藤寧音はベッドの背に身を預け、小寺蘭がわざわざ煮込んでくれた安胎のスープを、少しずつ口に運ぶ。

そのとき、小寺蘭のスマホが鳴った。

画面に表示された名前は――古川寒弥。

小寺蘭は眉をひそめ、スピーカーに切り替えると、寧音に向かって「声出すな」と手で合図した。

受話口の向こう、古川寒弥の声はどこか疲れている。

「小寺蘭。滋養の品をいくつか送らせた。須藤寧音の術後の身体のためだ。食べさせてやれ」

気遣いの形をしていながら、言葉の端々に『与えてやる』という感覚が滲む。

須藤寧音の...

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