第113章 須藤寧音は危険にさらされている

古川寒弥が結婚式の「無期限延期」を宣言してからというもの、西川家の空気は底まで沈みきっていた。

坂東彩は、ここで手をこまねいていれば終わると悟っていた。翌日にはもう、貴婦人たちの界隈で『謎めいた奥様』と囁かれる木下奥さんに面会を取りつける。

場所は、内装の行き届いた会員制のプライベートクラブ。

木下奥さんは周囲をはばかるように息を潜め、ベルベット張りの小箱を、そっとテーブルの上で滑らせてきた。

箱の中にあったのは、真っ黒な石だった。形は歪で、表面はざらつき、無数の小さな穴が穿たれている。まるで何かに蝕まれた痕のように。

ただそこに横たわっているだけなのに、生き物のような気配がある。...

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