第117章 着物を着た彼女

飛行機は、心臓を鷲掴みにされるような数分間の垂直降下と激しい乱気流をくぐり抜け、機長の沈着な操縦のもと、ようやく雷雲域を突破した。機体がぐっと持ち直し、揺れは嘘みたいに収まっていく。

機内灯がぱっと点り直す。

助かった――その実感に、あちこちから嗚咽を噛み殺す声と、震え混じりの歓声が漏れた。

須藤寧音の鼓動はまだ胸を突き破りそうに速い。けれど、極限まで尖っていた恐怖は、背中越しに伝わる男の落ち着いた心音と、体温の確かさに撫で消されていた。

古川寒弥は、彼女を完全に覆うように庇った姿勢のまま、機体が完全に安定するまで動かなかった。

そして揺れが消えたのを確かめると、ようやく身を起こし...

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