第119章 須藤嬢にとっては良いことかもしれない

「寧音! どうしたの!? お願い、驚かせないで!」

文さんの悲鳴が、ようやく――何もかもを遮断していた膜を突き破り、須藤寧音の耳へ届いた。

文さんが怯えきった顔で、今にも崩れ落ちそうな彼女の身体を必死に支えている。周囲のスタッフたちも、心配と戸惑いの入り混じった視線を向けていた。

けれど、寧音は何も言えなかった。

唇が勝手に震え、歯が「カチカチ」と鳴る。心臓の奥から極寒が広がり、四肢の先まで凍りついていく――まるで氷の底に突き落とされたみたいに。

「蘭ちゃん……蘭ちゃんが、行方不明に……」

喉の奥から、やっとの思いで絞り出した言葉は、ぼろぼろに砕けていた。堰を切ったように涙が溢れ...

ログインして続きを読む